ウイーン…
舞人「あれは…」
メインルームに入ると、黒いローブに身を纏い、仮面を付けた人物が真正面に座っていた。紛れもなく犯行声明に出ていた映像の人物、ゴルゴンその人だった。
ゴルゴン「ようこそ、我がアジトへ…」
舞人「もう逃げられない、投降するんだ。」
バーン!!
室内に銃声が響き渡ったと同時にゴルゴンは倒れる。舞人は隣を見ると星史がハンドガンを握り、硝煙が上がっている。
舞人「星史君!!何を!」
星史「安心してください!あれは人形ですよ。今の俺には、オーラが見えるんですよ?」
舞人「に、人形?」
ゴトッ…
倒れたゴルゴンの仮面が外れると、その姿はスピーカーの付いたマネキンだった。舞人は、そうと分かり安堵の表情を浮かべる。
舞人「星史君、驚かさないでくれ…じゃあ、奴はどこに?」
星史「しっかりと居ますよ。そろそろ隠れてないで出てこいよ!ここまで来て人形に喋らせてんじゃねえよ。そこに居るのは分かってる。今回の首謀者、ゴルゴン。…いや…」
星史「アメリカの州立大学の准教授で生物化学の専門家、ジェシカ・河島さん?」
物陰から、ゴルゴンと思われる人物が現れる、その人物は電話インタビューを受けていたアメリカの州立大学の日系アメリカ人の女性准教授ジェシカ・河島(28)であった。
星史「どうやら、その様子だとゴルゴンで間違いなさそうだな。犯行声明のオーラと同じだしな。」
河島「良く分かったわね。私が今回の黒幕ゴルゴンだって。」
星史「確証はなかったけどな。最悪でも今回の石化に関わってる事は明白だったぜ。アンタはボロ出したからな。」
河島「ボロ?」
星史「ああ、アンタ電話インタビューでこう言ってたよな?『現在資料を基に分析中ですが、この『ゴルゴンの涙』は未知の生物化学兵器であり、生命に危険があるのか分かりませんが恐ろしい兵器に違いありません。』って…」
河島「それが?」
星史「あのインタビューは犯行声明が流れたおよそ10分後。そもそもアンタが黒い雨を『ゴルゴンの涙』と言った時点で有り得ない矛盾なのさ。」
河島「言ってる意味がよくわからないわね。犯行声明では『ゴルゴンの涙』と言ってたのにね。」
星史「教えてやるよ、GDOはあの犯行声明の映像を日本を優先的に最初に放送し、日本の放送局をキー局として世界に順次配信したのさ。その犯行声明の映像で初めてあの黒い雨の名称を『ゴルゴンの涙』という名称だと知った。アメリカでこの犯行声明の映像は日本で放送されてから60分後に放送されてる。」
河島「!?」
星史「分かったようだな?日本で犯行声明が放送された10分後にアメリカの大学で電話インタビューを受けたアンタはどうあっても『ゴルゴンの涙』という名前は出てこないはずなんだよ。アンタが日本のテレビ局から電話インタビューを受けた時間アメリカでは犯行声明の映像は流れてねぇんだからな。」
河島「…ウフフ、ワンダフル!素晴らしいわ!でも、もう手遅れよ。もうどうにもならないわ。」
ピー!ピー!ピー!
浜田「星史君、舞人!GDOによってワクチンの散布と提供が間に合ったそうだ。ワクチン投与は成功!石化された人たちは順次回復していってるらしいよ!」
河島「な!?そ、そんな!有り得ないわ!だって、あれは…」
星史「残念だけど、俺たちはちょっと特別なんだ。」
舞人「もう逃げ場はない。」
河島「く…」
星史「投降するんだ、もう終わりにしようぜ。」
カチャ…
星史&舞人「!?」
河島「動かないで!動くとこの爆弾を起爆させるわ!」
ジェシカ・河島は隠し持っていた爆弾を二人に向ける。
河島「残念だけど、捕まったところで結果は同じよ、私は無差別の大量殺人未遂を試みたんですもの。死刑は免れないわ。なら、貴方たちも道連れにしてあげる。」
舞人「…無駄な抵抗はよすんだ。爆弾を捨てて…」
星史「…動機は、復讐か。」
河島「…ええ、GDOと日本に対するね。」
舞人「罪のない人を巻き込んでもか…」
河島「もう遅いわ。何もかもね…」
星史「…アンタは元々こんな事する人じゃないはずだぜ?そうだろ?アンタの本当の正体は、10年前、最新生物化学兵器の開発でGDOに摘発されて自殺しちまった重村シュウジ教授の愛娘、重村カオリなんだからな。」
河島改めカオリ(以降カオリ)「フフ…そこまで分かってるのね。」
舞人「重村教授の家族には、妻サナエさんと愛娘の重村カオリさんが居た。妻のサナエさんはその後、病死。しかし、重村カオリさんの生死だけ不明のまま、戸籍そのものが消えていた。代わりにアメリカの記録ではジェシカ・河島名義の人物は20才以前に存在しなかった。」
星史「つまり、秘密裏にアメリカに亡命し、不正に国籍を取得したと考えた。今回の事件は重村教授の関連が強いからな。自然とアンタが重村カオリ本人であるという推測は自ずと成り立っちまうんだよ。」
カオリ「…そうよ、貴方の言うとおり。私は10年前、自殺した重村シュウジの娘、重村カオリよ。」
星史「重村教授は、国際バイオ化学学会でも一目置かれるほどの天才化学者で平和的なバイオ化学の研究に熱心な人だった。けれど、裏である人物の圧力があった。そうアンタと同じ電話インタビューを受けてたあのギルバート・マドラー博士(64)さ。マドラーは重村教授の天才的頭脳に心の底で妬むと共に、使えると踏んだんだろうな。だからマドラーは国際バイオ化学学会の権威を使って脅迫し自身が秘密裏に推し進めていた最新生物化学兵器の開発を重村教授に押し付けて着手させたんだ。」
舞人「しかし、その目論見は敢えなく散った。GDOに開発内容が露見し、摘発されてしまった。重村教授はこれを期に洗いざらい告発するつもりだったが、マドラー博士の絶えない脅迫に最終的には屈してしまい、重村教授は遺書を残して自殺に追い込まれた。そして、混乱を避ける為という名目でマドラー博士はGDOに働きかけ、事件は日の目を見る事なく闇に葬られた。」
星史「全て、重村教授の関係者として挙がったマドラー博士の裏を調べた上で出てきた情報だ。アンタの事だ、5年前にオーボスの地球侵略で地球が滅亡してたら、それはそれで良かったんだろ?けれど、それはある勇者たちによって阻止されちまったから、いつかもう一度復讐をしようと誓ったんだろ?」
カオリ「父は、マドラーによって嵌められ、そして自殺したわ。家族思いで優しい父だった。そんな父を追い詰めて自殺に追いやったマドラーも父を捨てた日本も一方的に父を犯罪者扱いしたGDOもそしてそんな人間たちを生んだこの世界も全て滅ぼそうと思ったの。この『ゴルゴンの涙』を使ってね!」
舞人「それで国際テロであるドラゴンヘッドと組んでこんな事を…」
カオリ「そうよ、ドラゴンヘッドと一緒にこの腐り切った世界を無に帰そうとね!」
星史「…アンタは知らないだろうな。」
カオリ「何をよ!何を知らないというの!!」
星史「…重村教授は誰にも気づかれないよう秘かに日記を記していた。その隠されてた重村教授の日記を調べたら、重村教授はアンタに対して告発する為の内容と証拠を残している可能性がある。」
カオリ「Σ何ですって!?」
舞人「…今貴女が肌身離さず、身に付けて今まさに握りしめているそのペンダントは重村教授が亡くなる数日前の貴女の18才の誕生日に贈られた物。それ以来、貴方は四六時中身に付けている。その中に恐らく…」
カオリ「!?まさか…」
星史「…ああ、告発するに足る証拠のデータが残っているはずだ。そのペンダントにな。」
重村カオリは星史たちに指摘され、胸元で握り締めていたペンダントを念入りに調べる。
すると…
パカッ…
カオリ「マ…micro…SD…」
ペンダントに填められていた家族の写真の裏側に、microSDが埋め込まれていた。
星史「重村教授はアンタに最も正当なやり方で事を解決して欲しかったんだよ。こんな人災を起こすんじゃなくてな。」
舞人「…爆弾を置いてもらおうか。」
カオリ「……」
カタン…
重村カオリは無言のまま、手に持っていた爆弾を足元に置いた。舞人は咄嗟にその爆弾を回収する。
舞人「ふう…」
カオリ「フ…私の負けよ…結局私も形は違えど、マドラーとやっている事は同じだったのね…こんなに近くに証拠があるなんて…私もどうかしてたわね。」
星史「…アンタに最後に一つだけ聞かなきゃいけねぇ事がある。」
カオリ「何かしら?」
星史「誰にこのウイルスを提供して貰った?」
カオリ「ああ、その事ね。」
舞人「このウイルスは地球上には存在しないウイルス、貴女が手に入れる事は不可能だ。」
星史「もう隠し事はなしだ。誰に貰ったんだ?」
カオリ「…謎の男よ。突然、私の研究所に現れたの。『これを使えば、復讐できる。』ってね。どうして私がいつか復讐しようと考えてる事を知ったのか分からないけどね。でもちょうど良かったから色々使用方法を聞いてたら、そのうち何も言わず、姿を消したわ。」
星史「…そうか。」
カオリ「…最後に私からも聞かせて。貴方たちの名前は?」
星史「高杉星史。」
舞人「旋風寺舞人。」
カオリ「星史君と舞人君ね。…貴方たちに当時会っていれば、こんな事には絶対ならなかったわね。」
星史「俺たちも出来たら、その当時にタイムスリップしたかったですよ…」
カオリ「フフ…じゃあ星史君。これを貴方に渡すわ。」
重村カオリはそっと星史にペンダントを渡した。
星史「!?まさか、アンタ…」
カオリ「それで、父の無実を証明して、マドラーに罰を与えてね。オーボスから地球を救った勇者さん。」
星史「な!?」
ダッ!
舞人「しまった!!」
星史「まずい!待て!!」
ウイーン…ガシャン!
そういうと重村カオリは急に走りだし、奥の部屋に閉じ籠ってしまった。
星史「馬鹿な真似はよせ!!」
必死でハッチを開けようとするが、ビクともしなかった。
ポチッ…
ビー!ビー!ビー!ビー!…
舞人「え…」
アナウンス「アテンション!アテンション!自爆装置が作動しました。自爆まで残り30秒…」
浜田「二人とも!早く脱出をするんだ!自爆装置が作動してる!このままじゃ二人とも死んでしまう!!」
ドン!!
星史は思いっきり拳で壁を叩く。
星史「くそ、やっぱりかよ!どの道、命を絶つつもりだったのか…」
舞人「…星史君、諦めて退避するしかない。時間がない、急ごう!!」
星史「…ええ!」
星史と舞人は急いでメインルームを後にした。
アナウンス「10…9…8…7…6…5…4…」
星史「くそ!!」
舞人「星史君、外に出た!!早くマイトウイングに乗り込むんだ!!」
星史「よっと!!」
アナウンス「…3…2…1…」
ゴォォ…
アナウンス「0!」
…ドガァァァァン!!
激しい爆音とともに研究所となったアジトは原型を保たず爆発で崩れだし、一瞬で轟々と燃え盛る炎に包まれた。
星史と舞人は間一髪マイトウイングに乗り込み、難を逃れ、その光景を固唾を飲んで見守っていた。
舞人「…間に合ったね…」
星史「ええ、危うく天に召される所でした。」
舞人「…どうやら彼女は星史君がダ・ガーンたちの元隊長だと分かったようだったね…」
星史「どういう理屈で分かったかは不明ですけどね。…でも、結局最悪な幕切れになっちゃいましたね…」
舞人「…そうだね。」
ピリリリリ!ピリリリリ!
ピ!
星史「もしもし?」
ひかる「星史君!無事!?」
星史「ああ、ちょっと危ねぇ所だったけどな(笑)」
ひかる「星史君!!お母さんが、元に…元に戻ったわ!!」
星史「…そっか、良かったじゃねぇか!(笑)」
ひかる「ええ!!星史君、ありがとう!!」
星史「礼を言うんなら、舞人さんたちに言えよ(笑)」
ひかる「そうね。星史君、いつ帰ってくるの?」
星史「心配すんなよ。もうすぐ帰るさ!ちょっと時間が掛かるけどな!」
ひかる「分かったわ!!待ってるわね!!」
星史「ああ。」
ピ!ツーツー…
舞人「ひかるちゃん、良かったね!」
星史「どれもこれも舞人さんたちの協力がなかったら、成し得なかった事です。感謝の言葉が絶えません。」
舞人「星史君の努力と正義感のおかげさ!俺たちはただ手伝ったに過ぎないよ!」
モニターの先で浜田も笑顔で頷く。
浜田「あ、そうそう!舞人!いずみさんが帰ったら、残ってる仕事片付けてからなら、そっちに留まっていいってさ!(笑)」
舞人「そ、そうか…しっかりしてるな…ハハハ(汗)」
星史「今回ばっかしは、逃げられそうにないですね(笑)」
浜田「まったく、舞人は…あ、因みに僕もそっちに行くからよろしく!(笑)」
星史「Σイイッ!浜田さんも来るの!?」
浜田「大丈夫!舞人たちみたいに、急には行かないよ!(笑)」
星史「そ、それならいいか…(汗)」
舞人「さあ!積もる話はあるけれど、とりあえずは皆のところへ帰ろうか?」
星史「そうですね!帰りましょう!!皆の下へ!」
舞人「ああ!」
マイトウイングは颯爽と日本に向けて飛んで行った。
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