星史の指示で早速全員で準備に取り掛かった。

星史とひかるの二人はさすがの手つきでテキパキと材料の下拵えを進め、指示も的確だった。その二人に触発され根元巡査も一生懸命力になろうとするのだった。いや、ただ単に怒られたくなかっただけなのかもしれない。

その為、準備は着々と進み、予定よりも一時間早く開店する運びとなり、開店からまもなく海の家ネモトはごった返しの大盛況になった。

ガヤガヤ…ガヤガヤ…

星「焼きそば、上がりました!(汗)」

ひ「焼きとうもろこし焼き上がりまーす!(汗)」

*「お好み焼き一つ追加!」

星「了解です!(汗)」

*「オーダー!焼きそば三人前!」

ひ「はぁーい!(汗)」

*「根元さん!コーラお願い!」

根「ハイハーイ!(汗)」

*「おーい、姉ちゃん!こっちにも、頼むぜ〜!」

*「はぁーい!今行きまぁーす!!」

星「根元さん!野菜が足らないから、持って来て!」

根「ハイハーイ!」

ひ「あ、ついでに小麦粉もお願いします!」

根「ハイハーイ!」

星史の声、ひかるの声、根元巡査の声、スタッフの声、更にはお客の声と四方八方から言葉が飛び交い、一同聞き分けるのが苦労するほど、てんやわんやだった。

星「くっそ〜…予想以上に混み合って半端ねぇぜ…(汗)」

ひ「良く二人で持ってるわね(汗)」

*「あ、ひかるじゃん!」

*「ヤッホー!ひかる!」

*「何してんのー?」

ひ「え?み、みんなー!」

二人が話してると、ひかるに声をかける三人組が現れた。どうやらひかるの知り合いらしく、カウンター近くに陣取った。

*「もしかして働いてるの?」

ひ「別に深いわけじゃないんだけどね。あ、何にする?」

*「暑くて堪んないのよ!かき氷3人分お願い!あたしはイチゴ」

*「あたしもイチゴ!」

*「あたしレモンね!」

ひ「イチゴ2つとレモン1つね。今、持ってくるからちょっと待ってて!」

星「ひかる。知り合いなのか?」

必死で調理している星史の横をかき氷を乗せたお盆を持って横切る際、星史が気になって尋ねてきた。

ひ「ええ。テニス部の友達…」

星「ふーん。そうなのかぁ。」

星史は、特別に珍しいとも思わなかった上、調理する事に神経が傾いていたので、我関せず、調理に集中し直した。

ひ「はい、おまちどおさま。」

両手にかき氷を乗せたお盆を持ち、かき氷を3人の手前に1つずつ丁寧に並べ終わる。

*「ねぇねぇ、ちょっと話そうよー!」

ひかるが仕事に戻ろうとして3人の前を去ろうとした瞬間、1人の女子がひかるを呼び止めた。

思いもよらない一言にひかるは、一瞬戸惑ったが、星史達が頑張っているのに、自分だけがサボってはいけないと我に返った。

ひ「そうしたいのは、やまやまなんだけど、ごめんねー。ちょっと今、手が離せなくて、星史君達に迷惑になっちゃうから…」

星史も離れたところから調理しながら、その様子を見て考えていた。

ひかるの知り合いが来たのならひかるも少しゆっくり話したいんじゃないか。

しかし、ひかるは他人が大変なのに自分の都合を優先にしない人間だと言うことを星史は理解していた。

星(本当は、話させてやりたいけど、手が離せないのも確かだしなぁ…)

根「星史君!もうこれで野菜終わりだよ!生麺と小麦粉もあと僅か。こんなに混むなんて思ってなかったからさー。」

そこへ材料の入った段ボールを両手に抱えた根元巡査の顔があった。

グッドタイミングだった。

完売間近な上、あのくらいなら、根元巡査でも大丈夫だろう。星史はそう感じた。

星「そうですか〜、じゃあ、もう売り切れ間近か。あ、ひかる。せっかく友達と会ったんだし、休憩がてら、話でもしてろよ!」

ひ「え?でも…それじゃ星史君が大変じゃない?」

星「お前、結構、疲れてフラフラだろ?俺はまだ大丈夫だし、根元さんだって野菜切るくらい問題ねぇよ!(笑)少し話でもして気分転換してろよ!な?」

星史の一言にひかるは少し驚いた。しかし、その言葉が嬉しくて、星史の心遣いに甘える事にした。

ひ「そ、そう?じゃあ、お言葉に甘えて休むね。でも、キツかったら言ってね?」

星「ああ。任せとけよ。」

ひかるは3人の前に椅子を持って来て座り、掛けていたエプロンを膝の上で畳んだ。

*「ねぇ、どうして、ここで働いてるの?」

ひ「近所のお巡りさんにお願いされたの。学校の先生達には内緒にしててね?」

*「ねぇねぇ、ひかるー!彼って確か生徒会の人だよね?」

ひ「ええ。高杉星史君。お隣さんでね。」

*「ひょっとして…、彼氏?(笑)」

ひ「///Σなぁ!違う!違う!ただの幼馴染みよ!幼稚園からの腐れ縁なだけよ!(照)」

思わぬ一言にひかるは、我を忘れて顔を真っ赤にさせて大声を上げてしまった。

ひかるは口を両手で塞ぎ、やってしまったと後悔した。

しかし、その声は店内の賑わった音に掻き消されていたようで、誰も気にも止めていなかった。星史も調理に集中していて全く耳に届いてないようだった。

ひかるはそっと腕を撫で下ろし、ホッと息を吐き安堵の表情を浮かべた。

*「ひかるったら、わっかりやすーい!(笑)」

ひ「///ちょっと、やめてよ!もう!(照)」

*「ごめん、ごめん!そんなムキにならないでよ!(笑)」

ひ「もう!」

*「でも、彼って、かっこいいよねー。」

*「あたしもそう思う!」

ひ「ああ見えて、結構お調子者だから、あまり買い被りし過ぎない方がいいわよ?」

*「でも、料理してる姿、結構サマになってるー!」

ひ「元々、ご両親が忙しくて家に居ないから小さい頃から料理をしてたのよ。おかげであたしなんか歯が立たないほどレパートリー多くて嫌になっちゃう!」

*「へぇ〜、苦労してんだ〜。」

ひ「当の本人は料理するの好きみたいだけどね!」

話が弾む中、非常に申し訳なさそうな表情で星史がひかるに近づいてきた。

ひ「星史君?どうしたの?」

星「話してるとこ、悪ぃな、ひかる(汗)野菜切るの根元さんに任せたら、残り少ない野菜なのに、切るの雑過ぎて、話にならねぇんだよ…(汗)俺が言うのも何なんだけどさ、悪ぃけど一度戻ってくれないか?」

ひ「あ、うん。大丈夫。今行くわ。ごめん、話の途中悪いんだけど、仕事戻るね!じゃ!」

*「頑張ってねー!」

*「…ひかるってホントツンデレよねー。(笑)」

*「ホントホント。(笑)」

*「素直じゃないんだから。(笑)」

星「俺が言い出しときながら悪ぃな、ひかる。考えが甘かったわ(汗)」

ひ「ううん、おかげで少し気分転換出来たし、最後まで頑張れる元気が出たわ!気遣ってくれてありがとう!」

星「良いってことよ!完売目指してラストスパート駆けようぜ!」

ひ「オッケー!」

こうして海の家ネモトは大繁盛の末、完売という結果で終わった。
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