海の家で働こう!


星史(以降:星)「はぁ!?海の家!?」

突然、制服姿で星史の家にやって来た根元巡査の頼みに星史達は困惑していた。

根元(以降:根)「そうそう!ね!出来たら、星史君とひかるちゃんにも手伝って欲しいんだ!」

偶々、用があって星史の家に一緒に居たひかるも巻き添えの形で二人ともキョトンとした面持ちで全く動けず、淡々と根元巡査にしつこく迫られている。

ひかる(以降:ひ)「なんで、急に海の家なんかやることになったんですか?」

根「あ、それはね、地域の方々に日頃の感謝の意味を込めて警察署を挙げてのボランティアでする事になったんだよ。既に、海の家の設置は人数が集まってるから、あとは、調理担当だけなんだ。」

シドロモドロしながら、根元巡査が口にする。その姿に二人とも何かあると疑念を抱く。

ひ「ボランティアでやるんでしょ?なら、私達関係ないんじゃ…」

根「あ、い、いや、ちょっとね、実はみんな料理がその〜…ね…(苦)」

二人は疑いの目で根元巡査の苦し紛れの表情を見て二人は溜め息をついた。

また、根元巡査の悪い癖が出てしまったのだ。出来もしないのに後先の事を考えず、ノリで発言してしまう癖。それがここのところ、急増している。

昇進試験に毎回落ちていつまで経っても町交番の勤務なものだから、少しでも、昇進に近付けるように積極的に動いている。要はこのまま町交番で終わる事を恐れ焦っているのだ。二人ももう何回も根元巡査の無理難題に巻き込まれているので手に取るように分かる。

星&ひ「「やっぱ、これか…。/やっぱり、これね…。」」

二人ともなんて言ったらいいのか分からなかった。と言うか、完全に呆れてしまって言葉を口にする事も馬鹿馬鹿しくなったと言った方がその場に合っている。

ひ「…要は、根元さんが調理担当に手を挙げたんですね…」

星「それを俺達に頼むってことは、どうせまた出来もしないのに調子に乗って『海の家の調理なら任せて下さい!』なんて軽はずみに言ったんでしょ?」

根「アハハハハ〜…やっぱり分かるかなぁ?アハハハハ〜…(汗)」

星&ひ「「当然です!」」

根「ごめん…(汗)」

左手にハンカチを握り、流れ出る冷や汗ともとれる汗を頻りに拭き取り必死に説得を続ける。その姿は、警察官と言うより、もはやセールスマンである。

星「はぁ〜、高校入ってから毎度毎度無理難題を持って来てくれて、媚びれば、すぐに昇進するなんて甘い話ないでしょ…」

ひ「根元さん、ちょっと最近星史君より酷いですよ。」

根「そ、そうかな〜?」

星「俺の名前がそこで出てくるのも、なんか癪なんだけど…」

ひ「何?(ギロ!)」

星「///な、何でもございません…(汗)」

ひかるの突き刺さる視線に星史は咄嗟に危機感を感じ、視線を反らしてごまかした。まるで蛇に睨まれた蛙のようである。

根「頼むよ〜、この姿に免じて、お願い!」

ひ「それを何度聞いたことやら…」

星「俺達よりも大人なんだから、根元さんもそろそろ学習してよ!(汗)」

根「このとおーり!!」

根元巡査も取り返しのつかない事にならないように防ぐ為、簡単には、引き下がらない。二人はなんでこうも簡単には引き下がらないのに、どうして懲りずにすぐ安易に発言して自分を追い込んでしまうのか、全く理解出来なかった。

星「っていうか、何で俺達なの?」

根「だって、星史君料理出来るじゃないか〜。ひかるちゃんだって、春夫さんとつくしさんの娘さんだし!」

星「だったら、二人に頼めば?」

根「それが出来たら、苦労すると思う?」

星「つまり、俺達以外には頼めないってことね…(汗)」

ひ「親しくなりすぎるのも考えものね…(汗)」

根「いいじゃないか、夏休みなんだし、只で海に行けるんだよ!?」

ひ「良くないです!」

星「既に遊び目的じゃないでしょ!」

根「そんなこと言わないで、このとおーり!君たちだけが頼りなんだ!本当にお願い!」

最終的には土下座までされて泣き付かれる。

さすがにここまでくると、その姿が二人にとっても惨めに感じずにはいられないのである。だから、結局、協力してしまう何とも辛い性分だった。

星&ひ「「ハァ〜…」」

二人は、再び大きく溜め息をついた後、お互い顔を見合せ、その必死な姿に免じて敢えなく降参する事にした。

星「本当に今度だけですからね。」

ひ「次こそ、しっかりして下さいね!」

根「ありがとう!ありがとう!それでこそ君たちだ!本当にありがとう!」

根元巡査は、飛び上がって身体全身を使って喜びを表現しだした。まるで息を吹き返したように、明らかに先ほどとは違うほど元気を取り戻した。

星「やれやれ…引き受けた途端に元気になったよ(汗)」

ひ「ホント分かり易い性格ねぇ(汗)」

根「まあまあまあ、堅いこと言わず!!」

星「…んで?警察署からは、海の家に何人接客スタッフが出るんです?」

根「6人だよ!全員星史君の好きそうなべっぴんの婦人警官だよ!」

星「へぇ〜、べっぴんかぁ〜。それは、楽し…(Σビクッ!)」

星史は軽く顔がニヤけた途端、非常に燃えてくる殺気のようなものが隣から自分に向けられていることに素早く反応した。

ひ「へぇ〜、べっぴんねぇ〜、惑わされないわよね?せ・い・じ・君?(怒)」

星「も、もちろんです…(恐)」

最近のひかるは、特に星史が傍に居るときはこういう単語にめっぽう反応する。それを身近に嫌というほど感じているので拒否反応に近い反応を星史が示すのは、言うまでもない。

根「あ、これ、お楽しみに言わない方が良かったかぁ!星史君、ひかるちゃんに頭上がらないもんなー!いやー、これは、失敬、失敬!」

ひ「根元さん?(怒)」

星「根元さん、お願いだから、もうやめて…(恐)」

それを気付かずに火に油を注ぐ根元巡査は、まさに空気を読めない人間の第一人者である。

根「あ、ウォッホン、うんうん。で、次だよね?(汗)」

星「メニューはどうするつもり?」

根「それなら、考えてあるよ、これこれ。」

胸ポケットから、どこにでもある普通のメモを星史に渡す。中には、綺麗にまとめられているとは、言い難い箇条書きに出す品物が規則正しく書き連ねている。

星「うーんと、焼きそば、お好み焼き、とうもろこしにかき氷、アイスキャンディ、ドリンク各種…」

ひ「まぁ、大体こんなとこでいいんじゃない?」

星「まぁ、問題ねぇな。ビラは出来てるんですか?」

根「それも、問題なし!あとなんかある?」

星「アイスキャンディは、屋台に置いてても大半が売れ残るから、俺達が調理をやるとして、アイスキャンディの売り子を二人入れとけば、売れ残りも解消するかな。」

根「なるほど、それは名案だ!」

ひ「根元さん、ホントはそこまで考えなきゃダメなんですよ?」

星「ったく、しっかり企画練ってるんですか?(汗)薄利多売で行くとしても、売れなきゃ、大赤字なんだから、しっかりしてよ?」

根「ごめん、ごめん!いやぁ、やっぱり二人に相談したのは正解だったなぁ!(笑)」

ひ「ホントに大丈夫かしら?」

星「あんまり頼られても困るんだけどなぁ…(汗)」

根「じゃあ打ち合わせは終わりにしよう、そろそろ交番戻らなきゃ、じゃあ来週の日曜日よろしく〜!」

そう言って、根元巡査は足早に自分の勤務先である交番に戻っていった。

残された二人は、不安でいっぱいだった。

星「ハァ〜、企画推進能力が底知れてるぜ…本当に大丈夫かなぁ?」

ひ「あたしもかなり不安…」

星「ま、引き受けちまった以上、やるしかねぇよな。(汗)」

ひ「そうね…軽い暇潰しって事で頑張ろう、星史君。」

星「しっかり手伝った分、後でなんかお礼してもらう事にしとくか。」

ひ「良いわね、それ!少し位、おねだりしてもバチ当たんないわよ!」

星「そうしようぜ!…しっかし、あの調子で本当に大丈夫なんかなぁ…(汗)当日、どうなることやら…」

こうして、あっという間に日が経ち、当日になった。

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