夕焼け空




「Σええ!ちょっと勘弁してよ!根元さぁん!俺部活と生徒会で忙しいんですよ!」

「星史君頼むよ〜!調子に乗って『あのダ・ガーンのオーナーだったんだぞー!』って言っちゃって是非入部して詳しい話を聞かせて欲しいなんて言われちゃってさぁ〜。元勇者達の隊長の経験を活かす意味で町内のロボット研究会に一緒に入ってくれないかなぁ?最近も趣味でいろいろ機械いじったり、パソコンでプログラミングとかもしてるんだしさぁ〜。星史君が一緒に入ってくれるとこっちも心強いんだよ〜。」

「無理ですって!第一!確かに俺は勇者達の隊長だったし、機械いじったり、プログラミングは多少出来るけど、全ては興味本位だし!況してやロボットを作るなんて出来る訳ないでしょ!」

「この前だって星史君が作ったっていうロボットの試作品だって見せてくれたじゃないかぁ〜。」

「あれは、あくまで試作品だし、オモチャにも程遠いロボットなんですよ!そもそもオモチャ以上のロボットを作る研究会なんて無茶苦茶ですよ!」

「そこをなんとか、お願い!」

「だから〜!剣道部と生徒会の仕事の両立だけで手一杯なんですってぇ〜!」

「お願い!このとおぉ〜り!」

「あぁ〜、もう!」

こんなやり取りがあったのは、夏休みの中盤から後半にかけての頃。

そんな長いようで短い夏休みはあっという間に終わり、季節は秋になった。

街中はすっかり涼しくなり、街の人々にとっては、衣替えの季節。

厳光寺のある裏山は赤く彩られた紅葉一色になって風に揺れ、赤い葉っぱが舞う光景に癒される。

食欲の秋。

芸術の秋。

スポーツの秋。

秋という季節は、いろんな側面を持ち、個性豊かな人達が賑わいを見せる。

そういう俺も、今月執り行われる文化祭に向けて忙しい日々を送っている。

なんせいろいろ掛け持ちしているのだから…(汗)

俺は、学校で剣道部に所属する傍ら生徒会の役員の仕事で大忙し。

更には、根元さんのお陰で町内のロボット研究会にまで所属している。

剣道は元々小さい頃からやっていた為、実力が顧問の先生の目に止まり、中学でも主将をやっていたことも評価されてしまい、強制入部…って言うわけじゃないけど、結果的に断れず敢えなく入部した。

生徒会に至っても、同様。本当は乗る気はなかったんだけど、いろんなクラスメイトに背中を押され、強制的に副会長に立候補させられ、信任投票で圧倒的な票を集めてしまい、結局やる羽目に。

更に、街の交番に今も勤める根元さんから、町内のロボット研究会に入って欲しいと泣き付かれてしまい、そんな根本さんがとても憐れに感じてしまい、これもまた引き受けちまった。

根元さんも根元さんだぜ?

昔の俺じゃないんだから、少しは考えて発言すれば、いいのに。調子に乗ってあんなこと堂々と言うから。

とりあえず、混乱を避ける為に、俺が隊長だったことは隠してくれてるけど。

はぁ〜、全くどうしたらいいんだか…

そんなある日の生徒会執務室。

俺は、いつもどおり放課後、生徒会執務室で生徒会長と残り、残務整理をしていた。

「よし、これで全部っと!」

「会長!ここの書類全部目を通して頂けます?承認得るだけなので。」

「ああ、悪いな、星史君。また、代行って形で校長先生に承認得といてくれないかな?」

「ええ!またですか?もう勘弁してくださいよ〜。副会長の俺が毎回代行で承認受けてるんですよ?このままじゃ、会長の権限本当に無くなりますよ?」

「まあまあ、その辺は、大丈夫。大丈夫。」

「いやいや、大丈夫じゃなくて、これじゃ実質的に会長が俺じゃないですか!」

「大丈夫だよ。次の選挙には、君を生徒会長に推してあげるから。」

「いやいやいや、だから、そういう問題じゃなくて!ああ、もう!時間が無駄だな、こりゃ。はぁ、分かりましたよ、行ってきます!」

「悪いな、頼むよ。」

「はぁ、こんなんでいいのかな?」

生徒会長は、いつも面倒な仕事は俺に押し付けて自分はまったりと悠々自適に過ごしている。

別に、生徒会長が質が悪いと言っている訳じゃない。恐らくマイペース過ぎるだけで俺を期待してくれているからしょっちゅう仕事を任せるんだろう。

それゆえ、落ち着いて行動する事を全く苦にしていない。それが会長に選ばれた理由だ。

俺もそこは、見習わなければならない。

ただ、リーダーシップをあんまり見せないものだから、自ずと書記や会計係も俺に指示を仰ぐ形になる。

物事を焦らない印象の会長と違い、しっかり者の印象を持たれているようだ。

最近じゃ少し任せっきりが続き、学内の支持が下がるんじゃないかと不安になる。

コンコン!

「誰かね?」

「生徒会副会長の高杉です!本日も会長代行として、承認をお願いに参りました!」

「おお、高杉君。入りなさい。」

「失礼します。」

「ご苦労様。君も大変だね。」

「いえ、もう慣れましたよ。あ、これ今回の書類です。」

「はい。本来ならば、会長本人が来なきゃならんのにな、まるで副会長である君が会長本人のように見えてくるよ!」

「最近よく言われますよ。まぁ、僕としても、引き受けてしまった以上、最後までやり抜くつもりでいますし、会長も僕に期待してくれているみたいですから。」

「しかし、君としては、今度の生徒会長立候補には、難色を示しているのだろう?」

「会長のように、ドシっと構えられるほど、器が大きくないですから(笑)」

「またまた〜ハッハッハッハッ!」

「プッ…ッハハハ!」

コンコン!

「誰かね?」

「2年普通科の香坂です。高杉星史君いらっしゃいますか?」

「ひかる?…げ!しまった!今日練習休みだから、おもいっきり待たしてたんだ!」

「入りなさい。」

「失礼しまーす。」

「ひ、ひかる…(困惑)」

「ちょっと星史君!遅いじゃない!執務室に行ったら、ここだって言われるし。」

「ごめんごめん、会長にまた、頼まれてさぁ〜。(汗)」

「すぐに残務整理終わるんじゃなかったの!」

「悪かったってぇ〜。すぐ終わると思ってたんだけど、考えが甘かったわ(汗)」

「もう、これで終わり?」

「あとは、執務室に戻って報告して、終わり。じゃあ、校長先生。そろそろ、失礼します。」

「そうかね。では、これ、承認印押して置いたから、持って行きなさい。」

「はい、ありがとうございます。では、失礼します。」

「失礼しました。」

「気を付けて帰りなさい。」

……。

………。

「うん、ОK。後は俺がやっておくから。」

「そうですか。じゃあ、俺は、これで帰ります。」

「うん。お疲れ様。また明日。」

…パタン!

「…ふぅ、ようやく終わったぜ〜、剣道部の練習休みで良かったぜ。」

「副会長も大変ね。」

「ほぼ会長代行だけどな(汗)あ〜あ、すっかり夕方だな〜。もうちょっと早く帰れると思ってたんだけど。」

「いつの間にか、星史君。すごく忙しくなっちゃったもんね。」

「そういうひかるはどうなんだよ?文化祭に加えてテニス部の練習もあるから、忙しいんだろ?」

「まぁまぁかな。帰りも最近遅いし。星史君ほどじゃないけどね。」

「まあな。最近じゃ、今日みたいに夕方に帰れる日も珍しいからな〜。」

「…ねぇ、星史君。ちょっと寄り道してかない?」

「はぁ?どうしたんだよ、急に?…ははーん、さては、遅れた分何か奢らせようとしてんだな?そうだろ?」

「な〜に言ってんのよ!私がそこまで意地汚い訳ないでしょ!(怒)」

「悪ぃ悪ぃ、冗談だって!そうすぐ怒んなよ!(笑)んで?何処に行くんだよ?」

「向こうにある河川敷よ。」

「河川敷ねぇ。…あ、な〜るほど!もしかして夕焼け空を見に行こうってことか?」

「そういうこと!ね!行きましょ!」

「ああ!どうせ帰っても気分転換ならねぇし、行くか!」

「ええ!」

俺たちは、駆け足で夕焼け空を眺められる河川敷に行くことにした。もうすぐ、陽が沈み出す頃、俺の心が急かしているのか、言い出したひかるのことも気にせず徐々に必死で無我夢中で走っていた。

以前もそうだった。今から、何年前になるか。最近のようにめちゃめちゃ忙しい頃だった。

夕焼け空を、この目で目の当たりにして時間が止まったようにその鮮やかさに吸い込まれた。

穏やかな光に俺の心に静かな落ち着きを生んでくれた。

今でも、そうなるだろうか。

「よっと!到着っと!」

「ちょっと!星史君、いくらなんでも急ぎすぎ!」

「え?あ、悪ぃ悪ぃ。つい…」

「ったく、まぁ、以前もそうだったから、いいけどね。」

「あれ、そうだったっけ?(苦笑)」

「そうでした!(怒)」

「ごめん…(汗)」

「…うわぁ!綺麗!」

「ああ、すげぇ綺麗だ!まさに、青春って感じがするぜ!」

「満足した?」

「ああ!…忙しい頃にこの夕焼け空を見ると心が和むって言うか…うん?まさか…ひかるこの為に?」

「ピンポ〜ン!正解!」

「かぁ〜、やっぱりお前には、敵わねぇや…」

「それで?満足したの?」

「もちろんだよ!サンキューひかる!」

「本当にそう思ってる?」

「なんだよ〜、素直に感謝してんのに。」

「はいはい。分かったわよ!」

「…ったく。」

ふぅ〜まぁ、信用するしないは、お前の勝手だけど(微笑)。

やっぱり、俺のこと一番わかってくれてるのは、ひかるだけだな。

俺をいつも側から見守ってくれている。

そんなお前が居るから、俺もどんなに忙しくても、頑張れる。

お前には、本当に心から感謝してるぜ。

ありがとな、ひかる!

それにしても…

「……。」

夕陽に照らされたひかるも意外に…


「星史君、どうしたの?ボーっとしちゃって?」

「へ?い、いや何でもない!///(汗)」

「変なの。…ちょっと!星史君!熱でもあるの?顔赤いわよ?」

「な、何でもないって!///(照)」

「最近忙しいからね?いいわ!うちの自然食野菜食べさせてあげる!あと栄養豊富な納豆もね!」

「Σげ!納豆も?」

「好き嫌いは、駄目よ?」

「は、はい(汗)」

「それじゃ、行くわよ。」

「あ!おい、待てよー!…ったく。」

…顔が赤くなったのは、ひかるの所為なんだぜ?

「星史君!早ーく!」

「…あ、はいはい!」

…ま、いっか(笑)

意外に忙しい日ほど、いい発見が出来るのかもな。

この日の夕焼け空は俺の青春の1ページにしっかりと刻まれた。






END

あとがき

自分でも、ビックリするほど、長くなりました(汗)

時系列設定は前回の「星に願いを」の後ぐらいの時期。

アップ日との時期違いは、加味しないで下さい…

少し、前回のに比べて、星史のドタバタ感とほんのちょっぴり青春のときめき感を出しました。

ここで、今回のキャラ設定をおさらいします(汗)

星史は以前のお調子者の面影は少しは残っていますが、

高校生になった星史は経験を糧に小学生時代の年がら年中をお調子者で通すわけではなく、下心も控えめ。

少し大人びて、しっかり者のイメージに設定しています。だけどひかるにはいつも頭が上がらない…

こんな感じです。

なので、生徒会副会長、剣道部、町内ロボット研究会で、忙しい毎日を暮らしている…(この辺は星史が所属してたらいいなという願望)

…と言う勝手なイメージの元で今回の星史が出来上がりました。

次にひかるは、以前と同じく、世話焼きで星史を見守る唯一の人間。

テニス部に所属して星史のことをいつも気に掛けているって感じです。

因みに、根元さんはイメージ的に変わらず、調子に乗りやすいタイプ。

特別出演の生徒会長はジャンプで連載中のSKET DANCEの安形会長に近いイメージです。

楽しんで読んで頂けたのなら、幸いです。

次回もがんばります(汗)

2009/01/08