親愛なる友へ




ジリリリリリ…!

「…う、うん…ムニャムニャ…」

ジリリリリリ…!

「う゛…う〜ん…」

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!

「とぅわりゃあ!!」

ビシ!ビシ!ビシ!

「ふわぁ〜あ!…やっぱり、目覚まし多すぎると、うるせぇぜ…」

こうやって朝に、竹刀で8つある目覚まし時計を素早く止めることももう何年目だろう。昔からこの始まりは変わってない。

でも、何かいつもとは違う気がする。

「あれ?あ、そっか!今日から夏休みだっけ?」

そうだ、今日から、夏休みだった。部活の日以外は、思いっきり遊べるし、思いっきり寝られる。やはり、夏休みは最高だ!

「ヤッリー!もう少し寝てよー。」

なぁーんて、言えるわけない。

ゴン!ゴン!

「こらー!!星史くーん!!起きなさい!!」

案の定、隣のひかるが窓越しにテニスラケットで叩いている。

「やっぱりな…こう来ると思ってたけど。わかったよ、今起きるって!…ったく!ホント、ひかるったら、いつも変わらず、お節介だな〜!」

カーテンを開けて窓を開けると、待ってましたかのように、ひかるが腰に手を当てて仁王立ちしていた。いつもの光景だ。珍しくもなんともない。

「おはよう!ひ・か・るちゃん(笑)」

「もう!そうやって、朝からふざける!高校生にもなってだらしないわね!夏休みだからって、早起きは基本中の基本よ!わかってるの?」

「わかってるって!ホントお前には敵わないぜ(苦笑)…」

「ほらほら!わかったなら、ちゃっちゃと着替えて、顔洗って、歯磨いて!それから…」

「『朝ご飯済ませなさい!』って言うんだろ?」

「わかってるなら、さっさとする!!」

「はいはい。」

「あ!新聞もしっかり取るのよ!」

「はいはい!了解!」

「まったく、高校生にもなってだらしないんだから…ブツブツ」

ひかるは窓を閉めて、ブツブツ言いながら部屋の奥に消えていった。

「ふぅ、やれやれ(苦)まるで、母さんがもう一人居るみたいだぜ(汗)しょうがない、またブツブツ言われるのも敵わないから起きるか。」

母さんは、今日も先に仕事に出掛けている。未だに、朝一のニュース番組の看板ニュースキャスターである母さんは、いつまでもこのような状態が続くのを気にしているみたいだ。というか、俺よりも母さんの身体自身を心配して欲しいかな?

父さんは、防衛機構軍の少将に昇進した為、以前よりも忙しくなり、ほとんど家に帰って来れない状況だ。でも、その代わり、しょっちゅうテレビ電話を掛けてくる。
父さんは、人一倍、家族を大事にするからなぁ。いや、ただ寂しいだけなのかも。

まぁ、そんなわけで相変わらず、俺は、朝から一人。

今では、これが一番違和感がない。ま、一人の方が、のびのび出来るから何かといいんだけど(笑)

シャコ!シャコ!シャコ!シャコ!……

「…ったく、少しくらい、だらけたってバチ当たらねぇよ。ホントひかるはお節介と言うべきかお人好しと言うべきか。」

とは、言うもののやっぱり憎めないんだよな〜(汗)

そんな風に考えていると、カレンダーが目に入り、あいつのことを思い出した。

「…そういや、ヤンチャーが旅に出てもう一年だなぁ。今どの辺、回ってるんだろう?」

それは、今から、一年前のことだった。

地球で何不自由なく生活していたヤンチャーが突然、旅に出ると言い出したのは。

一年前。

「えぇ!旅に出るって!」

「ああ。もう決めたことだ。星史の父上と母上にも、了解を得た。」

「どうして?せっかく、入学した中学もあと半年で卒業なのよ?」

「確かに、俺は中学校と言う地球のことを学べる所に、星史の父上と母上の計らいで通わせてもらってこれ以上ないくらい、不自由なく生活出来ている。身寄りのない俺に、ここまで気を使って下さる星史の父上と母上には、大変感謝している。」

「だったら、何も旅に出なくてもいいじゃない!」

「俺には、まだ地球の知らないことが山ほどある。だから、この地球を隅々まで旅してもっと色々なことを学んでいきたいんだ!身勝手なことを言っていることは、わかっている。でも、自分のわがままで旅をするわけじゃない。地球人ではない俺に今何が出来るのか、この旅を通して見付けていきたいんだ!それが俺に出来る最善の恩返しだと思う。」

「…そうか、お前らしいな。」

「そこまで、考えているなら、止めるわけには、いかないわね。」

「すまない、星史。ひかる。突然、こんなこと言い出して…」

「旅に出る奴が気にしてちゃ、旅先で困るぜ?…気にせず、行ってこいよ!」

「お手紙ちょうだいね!」

「ああ!」

「どんなに離れていても、俺たちはオーボスとの戦いで苦楽を共にした仲だ。しっかり返事寄越せよ?約束だぜ?」

「もちろんだ。約束するぜ!」

…それから数日後、ヤンチャーは、その答えを見つける為に旅立って行った。

ヤンチャーは、不自由のない暮らしに不満があったわけではなかった。ただ、ヤンチャー自身義理堅い人間でこのまま何もせず、平凡に暮らしていいのかと考えたのだろう。ヤンチャーなりの決意だった。

「…あれから、もう一年になるのか。ヤンチャーの奴、全然、手紙の一通も寄越さないで、今どうしてんのかな?」

「あ、いけね!新聞、新聞と。」

こうして深く考え込んでいては、また、ひかるにどやされる。そう思って、俺は速やかに新聞を取りに行った。

カパ!

「あれ?おかしいな?何か引っ掛かってる。」

新聞受けからすんなり、新聞を取り出せない。奥を覗き込んでみると、何か別の物が投函されていて引っ掛かっている。奥に手を突っ込んで取り出してみると、

「うん?手紙?」

『dear SEIJI TAKASUGI』

と、書いてある。どうやら俺宛の手紙だ。

「…“親愛なる高杉星史へ”…俺に?今頃、手紙なんて誰だろ?」

俺は徐に宛名を見る。

「…from YANCHARUN・STARLET・BUNNER・GLIMSIUS・JACKGIMGER・WILDER THE 14TH…」

「Σ!!…ヤンチャーからじゃん!急いでひかるにも報せなきゃ!」

俺は、手紙を片手に持ち、急いで、レストランつくしに駆け込んだ。

ガチャ!チリン!チリン!

「おーい!!ひかる!!」

「あらまぁ、おはよう、星史君。」

「ああっと、おはようございます!突然、ごめんなさい!」

中では、春夫さんとつくしさんが開店の準備をしている真っ最中だった。

「どうしたんだね?星史君。そんなに慌てて。」

「何か、ひかるに用なの?」

「ええ、実は…」

二人に事情を話そうとしていると、騒ぎを聞きつけ、何事かと思ったのかひかるが姿を現した。

「星史君!どうしたのよ!朝一から、大声で呼ぶなんて!」

「ああ、ひかる!悪ぃ、悪ぃ!今、新聞受け調べたら、ヤンチャーから、手紙が来てたんだ!」

「うそー!本当に!」

「嘘ついてどうするんだよ(笑) ほら、見てみろよ!」

「本当!ヤンチャー君からだわ。」

「おお、ヤンチャー君からかね。」

「一体、今どうしてるのかしらね。」

ヤンチャーから手紙が来たことで、香坂家は一同賑やかになった。これも、ひとえにヤンチャー効果なのかもしれない。

「今から、それを読みます!あいつのことだから、また、生意気なこと書いてるかもしれないし!」

「そういう星史君もでしょ!」

「まぁまぁ、そう言うなって。」

「ほら、星史君。早く早く!」

「わかったって!そう急かすなよ!じゃあ、読むぜ?」

カウンターの席に陣取り、その周りにひかると春夫さんつくしさんが囲むような状態で俺は、封筒を切り開き、中の手紙を手に取って一字一句確かめるように読み始めた。

『星史、ひかる。元気か?悪ぃな!ホントは、もう少し、早めに返事出すつもりだったんだけどよ、いろいろあってさ。遅くなったことは勘弁してくれよな!俺は、今アフリカにいるんだ。地球の自然と生き物を肌で感じてるぜ!

それにしても、すげぇな、アフリカは、自然の空気もうめぇし、地球の生き物もいろんな種類がいて毎日ワクワクが止まらねぇぜ!

鬣(たてがみ)の立派なライオン。

鼻が長いゾウ。

首がやたら長いキリン。

どれも本に載ってた生き物だけど、間近で見ると、本当にすげぇ迫力だ。まさに地球で生きてるって言う実感が湧くもんだぜ!

あ!俺は、地球人じゃねぇか。アハハハ!

地球の生命力って本当に偉大だ。

オーボスにプラネットエナジーを奪われてたら、こんな光景見れなかったんだよな。地球って、俺も以前は、空気が汚ねぇ星と思ってたときがあったけど、それは極一部のところで、セブンチェンジャーの中で見てた時はここまでよく見なかったけど、こんなに美しかったんだな!

本当に、この地球を守れて良かったぜ!

この地球は、俺にとって第二の故郷だ。

これからも、穏やかな地球であって欲しいと心から思う。本当だぜ?

暫くは、アフリカに滞在して、次にヨーロッパを回って見ようと思ってる。ヨーロッパに行けば、地球人の古い文化がわんさか見れるらしいからな!

それまで、また暫く音信不通になっちまうかも知れねぇけど、悪く思うなよ!

じゃあ、また、いずれな!

親愛なる戦友、星史、そして、ひかるへ。

ヤンチャラン・スターレット・バンナー・グリンシウス・ジャックギンガー・ワイルダー14世より』

「…へへへ、まるで、観光旅行だな。」

「でも、ヤンチャー君、すごく楽しそう!」

「ああ、ヤンチャーらしいな。」

「ヤンチャー君、これから、もっと、いろんな体験をするわね。」

「まぁ、あいつなりにいい経験してるよ。」

「うん。」

「あとは…」

「あとは?」

「…あとは、地球を第二の故郷だと思わず、地球が自分の故郷だと認識することだけだな!」

「…星史君。ええ。」

…ヤンチャー。

俺たちは、ずっとここで、お前の帰りを待ってるぜ!

気が向いたら、いつでも帰って来いよ!

お前は、俺たちにとっちゃ、

親友以上に家族同然なんだから。





END
あとがき

前回考えた「記憶」の続編のようなものと考えてください!

星史は、高校生になって、少し大人しく、大人な考え方が出来るという妄想の象徴です。

因みにヤンチャーなんですが、星史よりも1歳年下です。(公式プロフより。)どうしても、自分の中で一緒に生活してる様子より、旅してる様子の方が、実感が沸いたのでこういう風になりました。

流石に、ヤンチャーの本名を覚えるのは、至難ですね(汗)

こんな駄文を読んで下さった方、とても感謝しております。

続きがあれば、またいずれ。

2008/10/20