記憶



「ほっほっほっ!よっと!ふぅー、着いた着いた〜!やっぱりここの空気は気持ちいいぜ!」

緑ヶ浜にある山の山頂に位置する寺、厳光寺。

ここは以前、地球の5つ目の開放点として地球を守る勇者たちと地球を滅ぼそうとするオーボス軍と一戦を交えた場所だ。

今から、もうすぐ5年になる。俺は、オーボス軍から地球の勇者たちと共にこの地球を守り抜いた。勇者たちの隊長として、地球に暮らす生き物全てを悪の手から守り抜いた。

世界中の人々は、人間同士の争いが意味の無いことだと言うことを学び、喜び、慈しみ合い、生き物の尊さと生きることの素晴らしさを改めて実感したんだ。

その後、共に戦った勇者たちは、元の勇者の石に姿を変え、再び永い眠りに就いた。

俺は、ダ・ガーンと約束し、そして誓った。

俺たち未来を背負う子供がこれから訪れる未来をこの手で守っていくと。ダ・ガーンたちが安心して眠り続けられる平和な世界を絶えさせないことを。

「あれからもうすぐ5年…か。終わってみれば、あっという間だな。おかしいな。あの頃の記憶が、つい最近のことだったような気がするぜ。」

俺は、あの後、無事に小学校を卒業して、中学へ進学した。中学生活は、オーボスとの戦いの経験があってか、有意義且つ充実した日々を送ることが出来た。

剣道部に入って、主将になったり、生徒会に入って学生の先頭に立ったり。

小学校時代に多々あったお茶らけることも極端に減り、小学校から知ってる同級生は俺の変わり様にすごく驚いていたっけ。

そして、去年地元の緑ヶ浜高校に入学した。

小学校時代からの旧友たちは、ほとんどこの町から離れた高校に進学して行った。残ったのは、俺とひかると蛍くらいだ。

俺たち3人は、この町に思い入れが他の奴とは違ってかなりある。だから、この緑ヶ浜を離れないでいる。地元愛なぁんてわけじゃないけど。

ただ、厳光寺から見下ろした町並みは、かつての町並みではない。

今じゃこの町も戦闘の被害も元通り復興し、目覚しく様変わりした。技術発展が進行し、より住み易く快適になった。高層ビルも幾つも建ち並び以前とは大違いだ。

「ここから見る町並みも変わったな。でも、ここは、全く変わってないな。」

「星史くーん!!」

「ひかる!!」

「やーっぱり、ここに居た!!探したのよー!!」

「何だよ。どうしたんだよ。そんな慌てて。」

「何言ってんのよ!星史君が先に帰っちゃうから探してたんでしょ!明日から夏休みだって言うのに。」

「だから、来たんだろ。こんなに早く帰れるの滅多にないんだからよ。一刻も早くここに来たかったんだから、しょうがないだろ?」

「そうだろうと思った!なら、どうして待っててくれないのよ?そんなに急ぐ必要も無いじゃない!午前上がりで、まだ昼食取ってないでしょ?」

「悪ぃ、悪ぃ。あとで、アイス一本奢ってやるから、勘弁!」

「ったく。最近じゃ、こういう時だけ調子いいんだから。」

「そう言うなって(笑)」

「もう!」

「ははは!」

ひかるとの他愛の無いこの会話は、以前と全然変わっていない。むしろ、これが当たり前だから、こういう会話が自然に成り立っちまう。やっぱり俺たちはお互いどう会っても幼馴染ってことだ。

「…もうすぐ…丸5年ね。」

「ああ、俺もそう思ってたところさ。」

「今の町の様子を考えると、あの時の事が嘘みたいね。」

「その分、平和が続いてるってことだよ。」

「…今でも…忘れらない?」

「…当然だろ。今に始まったことじゃないぜ。訪うに忘れてたら、度々ダ・ガーンにわざわざ報告に来やしないよ。」

俺は、ひかるを軽くあしらうように、笑いながら、返した。ひかるは、そんな俺を見て少しむくれた表情を浮かべた。

「な!何よ!少し、心配してあげたのに!」

「ぷ、ははは!ごめん、ごめん、そう怒んなって!ほら、さっさと行くぜ。」

「あ、待ってよ!」

境内に入ると、見慣れた光景が広がる。月に2,3度来ている為か、いつの間にか、お寺の住職さんとも仲良くなった。そう、ここが全ての始まりの場所。当時小5の俺は、ここで初めてダ・ガーンと会ったんだ。

「星史君?」

「あ、うん?何だ、ひかる?」

「どうしたの?星史君、急に立ち止まったりして!」

「え、ああ。ちょっとな。」

あれこれ考えに耽っちまった所為か自然と足取りが鈍っていつの間にか足が止まってた。

「何か、考え事?」

「…今考えれば、オーリンの言葉を俺が無視してここに来なかったら、この未来はなかったんだよな。」

「あの時、私は気絶してたから、詳しくは分からないけど、オーリンの呼び掛けがなかったら、地球は間違いなく滅んでいた。それを星史君とダ・ガーンたちが守った。」

「ここに来る度さぁ、あの頃の懐かしい光景が蘇ってくるんだ。いや、不思議とあの頃に戻った気がしてならないんだ。ダ・ガーンと初めて会ったあの頃に。」

「星史君…ダ・ガーンともう一度会いたい?」

ひかるの不意の言葉に俺は、一瞬ダ・ガーンの姿が脳裏を過ぎった。やっぱり嘘は付けねぇな。流石ひかるだな。

「そりゃあ会いたいさ。でも、ダ・ガーンがまた俺たちの前に姿を現すことになった時、地球が危険な状態にある時。きっとダ・ガーンたちは、平和を侵してまで俺たちに会いたいなんて思わないさ。伝説の勇者がそんなことを考えたら、勇者失格だからな。」

「星史君…そうよね!未来を守るって決めたんだもんね!」

「そうそう!あ、悪ぃ!つい立ち止まっちった!さっさとダ・ガーンに報告しようぜ!」

「あ、う、うん!」

俺たちは、急いで境内の中央に位置する厳光寺の本堂に向かった。

本堂にはいつも変わらない仏像が飾ってある。その額に翡翠の様な輝きをした石が埋まっている。あれがダ・ガーンが眠る勇者の石だ。

5年前、最後の別れをして宿っていたパトカーから抜けたダ・ガーンの勇者の石は、その数日後、再び仏像の額に取り付けられていた。

俺は、その時、訳が分からず、混乱してたら、住職さんによると何でも境内に落ちてたらしく、仏像に再び取り付けたそうだ。

住職さん自身、盗まれたと思ってたらしいから、尚更か。

「…ダ・ガーン。また来たぜ。」

(星史か…地球に危機が迫っているのか?)

ダ・ガーンの声。いつまでもまるで変わらない独特の声質。

これは、俺にしか聞こえない。いつの間にか、勇者の石に眠っているダ・ガーンと会話できるようになっていた。

5年前から俺が通い始めて3回目のことだ。

俺も最初は驚いてまさかと思った。

でも、本当だった。本当に嬉しかった。夢にもない願ってもないことだったから。

今ではこうやって近況報告に度々足を運んでいる。

「星史君何だって?」

「またいつものパターンさ。」

ひかるは声が聞けなくていつも隣で残念そうに見ているけど、もちろんひかるには何て言っているか通訳してやってる。

「…ハハハ!違うよ!ごめんごめん!最近こればっかで安心して眠れねぇかもな。今日で1学期が終わって明日から高校生活二度目の夏休みだ。…もうすぐ、戦いが終わって5年になるんだぜ。早いよな。」

(ああ、戦いが終われば、時が流れるのが早い。これが時間と言うものだ。)

「そうだな。お前も見てるだろ?この街の変わり様。あの時と比べたら、大違いだろ?」

(時代は、流れることで新たな文明を築き上げるものだ。私は太古からこの変化を見て来た。珍しいことではない。)

「俺もこの街に居てずっと見てたけど、ここまで変わるとは思ってなかったよ。こんなにでっけぇビルが幾つもあるんだぜ?」

(これからもっと増えるだろう。地球は時間を経て変わるのだ。)

「ああ。俺たちもあっという間に高校生になっちまったし、時間が経つのが本当に早い。」

(以前とは見違えるように成長したな。星史。これからも地球を守っていって欲しい。)

「ああ。そのつもりさ。平和が続くように父さんたちも努力してんだ。俺たちにも出来ることはまだまだたくさんある。まずはそれからさ。…なぁ、ダ・ガーン。」

(何だ?)

「もし、また地球がオーボスのような奴等に狙われるようになった時…もし、お前が俺をもう一度隊長として認めてくれるなら…俺と共に…また、戦ってくれるよな?」

(もちろんだ。星史。君が持つダイレクターにあるオーリンが君を隊長と認めている限り、私たちは力を貸す。星史、君は選ばれし、我等勇者たちの隊長なのだから。)

「…サンキュー!!ダ・ガーン!!」

「星史君、そろそろ行かない?私お腹空いちゃった。」

「あ、悪ぃ。俺もだ。じゃあ、ダ・ガーン!そろそろ俺たち行くからさ。また、来るぜ!」

(ああ、また会おう!星史!)

「星史君!忘れてないでしょうね!アイスのこと!」

「わかってるって!ほら、走るぜ!!」

「ちょ、ちょっと待ってよ!星史君ってばー!」

「アイス奢って欲しいなら、早く来ないと、奢ってやんないぜー!」

「ひっどーい!!ちょっと待ちなさいよー!!」

(……)

(…ふっ、星史、姿は少し変わったとは言え、相変わらずのようだ。星史、君にとってあのオーボスとの戦いは、君を著しく成長させたものになった。これからも無事に生きて欲しい。)

俺は絶対に忘れない。

オーボスとの戦いで経験したこと。

学んだこと。

そして、ダ・ガーンたち勇者が居たことも。

たとえ、世界中のみんながこの戦いのことを、勇者たちのことを忘れても、

俺は一人でも、このことを語り継いでいく。

地球の危機には、必ず…

勇者たちが目覚め、

悪と勇敢に戦うことを…





END

あとがき
初の他分野小説「伝説の勇者ダ・ガーン」の二次創作です。

ところで「伝説の勇者ダ・ガーン」って皆さん知ってますかね?

最近じゃ、千葉テレで放送もされた記憶も新しいですが、元々は92年にテレ朝で放送されていた勇者シリーズの第3作目で、私管理人一番大好きだったシリーズの一つなのです!

…で、一応この小説の設定は、最終回からのおよそ5年後の設定です。
主人公である高杉星史。名前は「せいし」じゃないですよ。「せいじ」ですから、お間違えなく。

あ!ちなみに、キャストはあのポケモンのサトシ役とJAMplojectで活躍中の松本梨香ねぇさんですから(笑)
この作品で梨香ねぇさん好きになったんですよね。
どんな作品か知りたい方は、free movie naviで見てみては、如何と。

これを短編とするか、続編を作るかは、気分次第ってことでお願いします。m(_ _)m

興味を持って読んでくれた方に感謝です!
宜しければ、ご感想も頂けると幸いです。
ありがとうございました。     


2008/09/11